Protocol

SSPTとは

Simple Swallowing Provocation Test ( SSPT; 簡易嚥下誘発試験 ) について

■はじめに
近年高齢者人口の増加に伴い、高齢者の肺炎死亡が増加してきており、その原因として、不顕性誤嚥の関与が明らかにされており、 嚥下障害の適切な評価が課題になっている。
誤嚥の正確な評価は嚥下造影がゴールドスタンダードであるが、全員に行うのは無駄が多い。
嚥下障害のスクリーニングのために、ベッドサイドでできる簡便な検査法がいくつか提唱されている。ベッドサイドでの嚥下・声の観察 ( 感度 21%、特異度 93% ) 、
オキシメータを使った嚥下評価 ( 感度 47%、特異度 86% ) ( 感度 87%、特異度 39% )、咽頭反射の検出 ( 感度 80%、特異度 68% )、咳反射、反復唾液嚥下テスト ( 感度 98%、特異度 66% )、嚥下誘発試験、水飲みテスト ( 感度 70%、特異度 88% )、食物テスト ( 感度 72%、特異度 62% )、嚥下前・後エックス線撮影 ( 感度 50%、特異度 76% )、内視鏡検査などである。
スクリーニング検査なので、感度・特異度ともに優れていることが求められる。スクリーニング方法は確立していない。

■SSPT とは
東京大学老年病学教室の寺本信嗣先生が提唱
( Teramoto S et al: Simple two-step swallowing provocation test for elderly patients with aspiration pneumonia. The Lancet 1999; 353: 1243. )

患者を仰臥位にする
5Fr のカテーテルを経鼻で上咽頭へ挿入する (約 13cm)
呼気終末に合わせて蒸留水 (室温) を 1-2 秒で一気に注入する
First Step: 0.4mL Second Step: 2mL
蒸留水注入から嚥下が出現するまでの時間を測定し、3 秒以内であれば正常とする
( 健常者で 1.7 +/- 0.7 秒 )

First Step への感度は 100%、特異度は 83.8%
Second Step への感度は 76.4%、特異度は 100%

First Step に対し正常な反応を示す群はaspiration のLow Risk 群
Second Step に対し異常な反応を示す群はaspiration のHigh Risk 群

Water Swallowing Test との比較
First Step: 10mL Second Step: 30mL
座位で 10 秒以内で飲めたものを正常とするFirst Step への感度は 71.4%、特異度は 70.8% Second Step への感度は 72%、特異度は 70.3%
( Teramoto S et al: Detection of Aspiration and Swallowing Disorder in Older Stroke Patients: Simple Swallowing Provocation Test Versus Water Swallowing Test. Arch Phys Med Rehabil 2000; 81:1517-1519. )

■まとめ
SSPT はaspiration の疑わしい患者への嚥下障害のスクリーニング検査として有用で、High Risk 群であれば、嚥下造影をする必要がある。
また、認知症、コミュニケーション能力の低下した患者にも有用である。
( 馬場幸他: 痴呆高齢者に対する嚥下障害のスクリーニング方法の検討: 簡易嚥下誘発試験と反復唾液嚥下テストの比較. 日本老年医学雑誌 2005; 42: 323-327. )

プロトコル一覧へ