教授のご挨拶Greeting

Atsuhiro Sakamoto, M.D., Ph.D.
大学院教授 坂本篤裕
研修医制度発足とともに、麻酔科医不足が言われるようになって久しいものの、あらゆる診療科に比して、麻酔科医の増加率は最も高く維持されてきています。麻酔科専門医も毎年200~300名程度増加しているものの、麻酔科医需要の急増と勤務先分布の偏りにより相対的供給不足が解消されていない地域・病院も未だ多い状況です。幸いにも本教室諸兄が、大学関係者、病院経営者に麻酔科医の必要性・重要性を理解していただく努力を怠らず、また、医学生・研修医に教育・臨床・研究を通して仕事のやりがい、経済的裏付け、将来性を提示し続ける努力により、本教室の入局者数は確実に増加しています。
教育面において、新教育システムでの最も大きな変化は問題解決型能力の養成と知識の偏重から技能・態度の重視であり、本教室が目指してきた教育であります。現在のFaculty developmentは麻酔科医が新教育システムでさらに重要な役目を担う好機であると捉え、従来の狭義の麻酔科学にとらわれず、教育改革に積極的に参画しています。研究面では従来の幅広い研究テーマを踏襲するとともに、特に重症患者管理を念頭に置いたショックの病態解明と対策、慢性痛一掃を目指した神経因性疼痛の解明、麻酔薬の機序解明から新たな麻酔薬の開発を3本柱に夢のあるコンセプトをもって指導していきます。
臨床面においては、麻酔専門医が周術期管理のエキスパートとしてだけでなく、院内疼痛対策ならびに緩和ケア、集中治療における重症患者管理、生命維持装置等を主とした医療安全管理、さらには総合診療、医療効率化に役立つ医師として教育していきます。21世紀における大学の教室は、従来の診療・研究・教育のみでなく、如何に社会に還元できるかが求められています。本教室も日本医科大学および付属病院のみならず、安定した高質の医療提供と一般社会に役立つ人材の育成を目標に尽力して参ります。