臨床を支える各部門Departments
- 患者様により良い医療を提供するために
- 日本医科大学麻酔科学教室では患者様により良い医療を提供すべく、麻酔、外科系集中治療室による術前から術後にかけて一貫した周術期管理、
慢性疼痛や癌の疼痛緩和を目的としたペインクリニック、緩和ケアを提供しています。以下に、4領域の特徴についてまとめています。
麻酔科医を中心に多職種で連携し、安全な周術期管理を提供
- 付属病院麻酔科の特徴
- 日本医科大学付属病院麻酔では年間7000件を超える麻酔管理症例数があり、専門医取得に向けて十分な経験を積むことができます。また、高度救命救急センターや循環器疾患集中治療室があるため緊急手術も経験することができます。
当科の特徴は多職種で連携がとれる「開かれた手術室」であることが挙げられます。
第一に、外科系各科との連携です。ハイリスク症例では事前に各科と情報共有し、必要な検査を進めて術前状態を評価して手術適応、周術期管理を立案します。
第二に看護師、臨床工学技士が麻酔補助業務として、私たち麻酔科医のサポートにあたってくれています。これにより麻酔科医の負担軽減が得られ、教育の拡充、より安全な管理をすることができます。
第三に、外科系集中治療室との連携です。当科より集中治療専門医、さらに、ローテーションで若手医師が集中治療を学ぶために派遣されています。術中だけではなく、術後も同じ考えの下で治療を継続することができますまた、集中治療を学ぶことで、麻酔管理が術中だけではなく、術後数日間の管理を意識したレベルの高いものとなります。
主に外科手術後の管理を行う国内でも数少ない集中治療施設
- 概要・沿革
- 1973年、日本医科大学付属病院にICUとCCUが同居する形態で集中治療室が開設されました。主に循環器内科がCCUを、麻酔科が外科系ICUを共同で使用してきましたが、2014年8月の新病棟開設に伴い、外科系集中治療室(SICU: Surgical ICU)として独立しました。当院SICUは厚生労働省が定める特定集中治療室管理を行う施設基準(特定集中治療室管理料1)を満たし、主に外科手術後の管理を行う集中治療室として、国内でも数少ない集中治療施設の一つです。
- 付属病院SICUの特徴
- SICUは陽陰圧管理が行える個室3床、オープンフロア(4人床)2室、個室9床の計20床の病床を有します。 集中治療の専門知識・技術を有する医師および看護師、医療スタッフ (臨床工学技士、薬剤師、放射線科技師、理学療法士、管理栄養士)を配置し、呼吸、循環、代謝、その他重篤な機能不全により急性期管理を必要とする全ての患者さんに24時間体制で、効果的で、高度な治療を施すことを目的とした集中治療室です。SICU専従の外科系集中治療科医師が常時SICU内に勤務し、各診療科医師と協働して患者さんの治療にあたるSemi-closed ICUの形態をとっています。日本集中治療医学会集中治療専門医3名(救急医学会救急科専門医1名、日本専門医機構認定麻酔科専門医2名)、日本専門医機構認定麻酔科専門医1名、麻酔科ローテーション専従医師3-4名(専修医もしくは助教・医員)でICU管理を担いますが、主診療科医師、外科系集中治療科医師、看護師、薬剤師、 理学療法士、管理栄養士による定期カンファレンスを開催し、それぞれの専門知識を活かして議論を重ねながら治療方針の決定と情報共有を進めていきます。
症例の多くは心臓血管外科、食道外科、肝胆膵外科、脳神経外科に代表される侵襲度の高い外科手術の術後管理です。そのほか、院内急変対応後の集中治療管理、循環器内科、呼吸器内科、血液内科など内科系診療科の心不全、呼吸不全、敗血症管理など、院内で集中治療管理を必要とする全ての重症患者さんの治療管理も担っています。2021年度のSICU入室件数の総数は1040件でした。科別の内訳としては、消化器外科395件、心臓血管外科178件、その他の外科系診療科262件、内科系診療科205件となっています。 - 麻酔科入局希望者の方へ
- 現在麻酔科医は術中麻酔管理だけでなく術前・術後を通した周術期管理に関わっていくことが求められています。麻酔科医にとってICUを経験することは、術後管理そのものを学ぶ機会というだけでなく、術後管理を見据えた周術期管理について考えるまたとない機会です。是非ICUでの経験をその後の麻酔・周術期管理に生かしてください。
- 集中治療に興味のある方へ
- 当初、主に外科手術後の術後管理を担う外科系集中治療室として発足しましたが、現在は院内急変対応事例後の集中治療管理、診療科を問わず院内で集中治療管理を必要とする全ての重症患者さんが入室してきます。そのため、麻酔科医のみならず、さまざまな専門領域のスペシャリストを必要としています。麻酔科、救急、内科、小児科、専門領域は問いません。育児との両立を考えている医師も大歓迎です。個々の多様性を重んじ、持続可能な勤務体系を作っていきます。我々と共に医療現場の「最後の砦」で働いてみませんか?当SICUで一緒に業務できる日をスタッフ一同楽しみにしております。
ペインクリニックとは痛みの診断と治療を行う診療科です。
がんなどの痛みだけではなく、頭痛、肩凝り、腰痛、下肢の痛みなど様々な痛みに対して治療を行います。ペインクリニックでは痛む箇所やその周辺の神経に局所麻酔薬を注射する神経ブロックを中心に薬物療法、理学療法などを併用しながら、痛みの治療を行います。
- ペインクリニックの対象となる疾患や症状
- 神経ブロック療法について
- 局所麻酔薬を痛む神経や交感神経節に注入することにより鎮痛と血管を拡張させる治療法です。鎮痛を主とした治療には硬膜外ブロックや末梢の神経ブロック、トリガーポイント注射等があり、頚部から下肢まで広い範囲にわたる鎮痛を行うことが出来ます。交感神経ブロックは星状神経節ブロック、胸部交感神経ブロック、腰部交感神経ブロックなどの種類があります。交感神経をブロックすることにより血流の増加、鎮痛効果、皮膚温の上昇、発汗停止などの症状が現れます。星状神経節ブロックは手、頭部、顔面など、胸部交感神経ブロックは頚部から腰部、腰部交感神経ブロックは腰下肢の治療に用いられます。
- 薬物療法について
- 症状に応じて鎮痛薬、抗うつ薬、抗けいれん薬等を投与します。抗うつ薬、抗けいれん薬は痛みにより過敏になっている神経を抑える働きがあり、ペインクリニックの外来では日常的に使用されています。
関節・筋肉などの痛み | 頭痛、肩凝り、むち打ち症、五十肩、腰痛症、首や腰の椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、変形性脊椎症、骨粗鬆症、ぎっくり腰、手足のしびれなど |
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神経痛 | 帯状疱疹痛、帯状疱疹後神経痛、三叉神経痛、肋間神経痛、坐骨神経痛、脳卒中後の痛み、手術後の創部の痛み、幻肢痛など |
血管病変 | 慢性閉塞性動脈硬化症、バージャー病、網膜血管閉塞症、レイノー病、肢端紅痛症など |
その他 | 顔面神経麻痺、多汗症、突発性難聴、自律神経失調症、めまい、耳鳴りなど |
各専門家と連携を取りながら、チーム全員で患者さんとご家族を支援します。
緩和ケアは、病気や治療によって生じる痛みなどの苦痛な症状、不安など心の問題や、社会生活における悩みをできる限り和らげ、その人らしく穏やかな生活が送れるように支援するための医療です。病気が進行した時期だけではなく、診断時や治療開始と並行して行われるべきものです。治療の早い時期から緩和ケアを導入することで、つらい症状を緩和しながら治療を進めることができます。 緩和ケアチームは、身体担当医師、精神担当医師、看護師、薬剤師、社会福祉士、管理栄養士で構成しています。
- 外来診療
- 緩和ケア外来では、外来通院にてがんの治療を行っている患者様の痛みやつらい症状などの緩和を行っています。現在治療を受けている先生と連携して行います。
- 入院診療
- かかりつけ医あるいは主治医の紹介から緩和ケアチームで入院診療を行っています。主に薬物療法(オピオイド、鎮痛補助薬など)、神経ブロックなど苦痛緩和を図り、患者・家族の希望に添えるようにしています。